NEWみんなの算数講座93 1を持ち出さない仕事算

NEWみんなの算数講座93 1を持ち出さない仕事算

みなさんこんにちは。ニューみん算講座93回目です。
今回はとても有名な文章題の仕事算を取り上げてみたいと思います。この講座で仕事算を書くのは93回目で初めてなんですね。自分でも意外でした。

仕事算では、あるきまった量の仕事が与えられ、その仕事をこなしていく人が何人か登場します。一番多いのは二人ですね。次に多いのが三人。それ以上ということもありますけど普通は二人か三人です。
仕事の出来は人によって違います。仕事が早くできる人もいるし遅い人もいます。その違いを与えられた条件に沿って仕事量という数値に直し、仕事が終わるまでの日数や時間数を求める文章題が仕事算です。

ではさっそく仕事算を出題してみます。

ある仕事を終えるのにAさん一人では12時間、Bさん一人では15時間かかります。
(1)二人でいっしょにこの仕事をすると何時間何分かかりますか?
(2)はじめにAさんが7時間仕事をし、残りをBさんがすると、全体で何時間何分かかりますか?
(3)二人でいっしょにこの仕事を始めましたが、Bさんが途中で休んだので、全体で7時間半かかりました。Bさんが休んだのは何時間何分何秒ですか?

「ある仕事」というのは味も素っ気ない書き方ですが、少し補足すると「内容や分量を気にする必要がない何かの仕事」という意味です。ここはみなさんの勝手な想像で大丈夫です。僕は空き地の草むしりを想定してみました。

ここで一つ了解してもらいたいのですが、仕事算は「ある仕事」の全体量を何かの数に決める必要があります。その決め方で、仕事の全体量を1とするという解説がとても多く、進学塾のテキストや参考書でもそれが圧倒的です。数学の本ではXにしている場合もあります。僕は昔からその1やXにまったくセンスを感じません。僕は特別な理由がない限り、仕事全体の量を1にはしません。Xに至ってはしたことがないです。

ではどうするか? 一行でまとめましょう。

仕事算の仕事全体の量は、問題の条件の日数や時間数の最小公倍数がベストです!

これが、1やXにすることに比べ、スッキリと仕事算が解ける方針なのは間違いありません。これからみなさんが仕事算を解けば解くほど、それを実感できると思います。1やXを使うと途中式が分数だらけになってしまい、内容以外のことで手間が増えます。仕事算を得意にしたい人は上の一行を忘れないでください。

問題に戻ります。
上の草むしりイラストの中に60と入れてあります。この60を全体の仕事量と考えます。60の根拠はAの所要時間12時間とBの所要時間15時間の最小公倍数ですね。

(1)
Aが60の仕事にかかる時間は12時間だから、
Aの1時間あたりの仕事量は60÷12時間=5
同様に、Bが60の仕事にかかる時間は15時間だから、
Bの1時間あたりの仕事量は60÷15時間=4です。

二人がいっしょに働くときの仕事量は1時間あたり5+4=9だから、
二人がいっしょに働いたときにかかる時間は、
60÷9=60/9時間=20/3時間=6と2/3時間です。
2/3時間を60倍して「分」に直し、解答は6時間40分と求めることができます。
*「時間」から「分」の単位換算は「×60」

(2)
初めにAが7時間仕事をすると、5×7時間=35の仕事が終わります。
その時点で残っている仕事は60-35=25です。
この残りの仕事にB一人がかかる時間は、
25÷4=25/4時間=6と1/4時間
単位を直して6時間15分です。

トータルの時間数はAが働いた7時間も加える必要があるから、
解答は7時間+6時間15分=13時間15分です。

(3)
この設問は仕事算の中に現れたつるかめ算です!僕の授業ではワークつるかめと呼んでいます。仕事算の設問でつるかめ算を持ち出すという発想は、しにくいかもしれませんが、問題の条件を考えると、この設問はまさにつるかめ算なのです。

では設問(3)の問題文を普通のつるかめ算の問題文と同じように書きかえ、比較しやすいように解説します。普通のつるかめ算の問題は、54回講座の問題を再利用しました。

〈普通のつるかめ算〉
からすと猫があわせて15匹いて、足の本数の合計は38本でした。からすと猫はそれぞれ何匹いますか?

〈今回の設問(3) ワークつるかめ〉
ABがいっしょに働く時間とAだけが働く時間があわせて7時間半あって、働いた仕事全体の量は60でした。ABがいっしょに働く時間とAだけが働く時間はそれぞれ何時間ありますか?

いかがでしょう?こうして比べてみると今回の設問(3)がつるかめ算であることにお気づきになるのではないでしょうか。
普通のつるかめ算は大丈夫ですよね?すべてがからすだと仮定すると、先に猫が求められるという例のパターンです。必要があれば54回講座も参照してくださいね。

今回の設問(3)を普通のつるかめ算と同じように解くと次のようになります。

手順1
7時間半すべてをどちらかの時間にしたときに消化できる仕事量を求める
*どちらかとは、「ABがいっしょに働いた時間」と「Aだけが働いた時間」のどちらかです。

7時間半すべてが「ABがいっしょに働いた時間」だとすると、消化できる仕事の量は、9×7と1/2時間=67と1/2です。
*7時間半=7と1/2時間

手順2
実際の仕事全体の量60との差を求める
67と1/2-60=7と1/2 ➡ 手順1で計算した仕事量は実際の仕事全体の量より7と1/2多い

手順3
手順2の差を「ABがいっしょに1時間働く仕事量」と「Aだけが1時間働く仕事量」の差で割る
「ABがいっしょに働く1時間」を「Aだけが働く1時間」に変えると、消化できる仕事の量は9-5=4減ります。消化できる仕事量を7と1/2減らすために必要な「Aだけが働く時間」は、
7と1/2÷4=15/2÷4=15/8時間
=1と7/8時間=1時間52.5分=1時間52分30秒
(7/8時間は60倍して52.5分。端数の0.5分は30秒)
これがAだけが働いた時間。つまりBが休んだ時間です。

これで今回の設問(3)を普通のつるかめ算と同じように解くことができました。つるかめ算には面積図を使う手もありますが、このように式だけで解けるようになると、よりいっそうつるかめ算を手中におさめたと言えるでしょう。面積図を使った方がわかりやすいという人は面積図も使ってくださいね。

***
1やXを持ち出さない仕事算の解説、今回はここまでにしましょう。次回も仕事算の続きとして、欠勤者がいる仕事フエフエ算(僕の命名)を扱いたいと思います。ではまた次回の94回講座でお目にかかりましょう。今回の内容、忘れないようにしてくださいね。

カーテンコール
仕事算には「人間が仕事をするパターン」以外に「機械が仕事をするパターン」や「給水管が容器に水を入れるパターン」もあります。容器のパターンでは排水管が出てくることもあり、その場合は「給水量-排水量=(実)増水量」と考えます。1問出しておきましょう。解答と解説は次回の講座の冒頭にて。

ある水そうに水を満タンにするのに給水管Aだけで入れると4時間かかり、給水管Aで入れながら排水管Bから水を流すと12時間でいっぱいになります。排水管Bだけを使ってこの水そう満タンの水を流すと、水そうがカラになるまでに何時間かかりますか?

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