Newみんなの算数講座69 ワワルワ、ワワルサ
みなさんこんにちは。ニューみん算講座69です。
今回は列車が主役の通過算をテーマに選びました。通過算といえば流水算、時計算と並んで速さの文章題のスリートップの一員です。でもなぜか今まで書いてなかったです。自分でも意外でしたけど今回講座69に通過算の初登場です。
通過算とは、列車が電柱や人の前を通過したり、駅のホームやトンネルや鉄橋を通過する速さの問題のことです。通過するから通過算。そのまんまのネーミングですね。
人や電柱などの横幅は考えないとか、ホーム、トンネル、鉄橋等を通過するときは、通過物の長さに列車の長さを加えたものが走行距離になるとか、通過算にはいくつかの常識があります。
下の図を見てください。
横幅を考えない人や電柱の前を通過するとき、列車が走る距離は〈列車の長さ〉そのものです。また、ホーム、トンネル、鉄橋などを通過するときに列車が走る距離は〈通過物の長さ+列車の長さ〉です。
ではここまでの内容で解ける問題を出してみます。
ある列車が電柱の前を通過するのに15秒かかり、1440mのトンネルに入り始めてから出終わるまでに1分35秒かかりました。この列車が1080mの鉄橋を渡り始めてから渡り終わるまでに何分何秒かかりますか?
通過算に慣れてくれば式だけで済ますことも十分できると思いますが、ここでは図を示して解説します。
上の図のように、電柱の前を通過するとき、列車が走る距離は〈列車の長さ〉です。トンネルに入り始めてから出終わるまでに列車が走る距離は〈列車の長さ+トンネルの長さ〉です。
図には列車の最後尾の移動距離を矢印で示しましたが、上下の移動の差は〈トンネルの長さ〉の1440mで、その移動に要した時間は95-15=80秒です。このことから列車の速さは1440÷80=18m/秒とわかります。
列車の長さは列車が15秒で走る距離だから、18×15=270mです。
この列車が1080mの鉄橋を渡り始めてから渡り終わるまでに走る距離は〈列車の長さ+鉄橋の長さ〉だから、その所要時間は
(270+1080)÷18=75より、75秒→1分15秒です。
ここまでが通過算の基本中の基本でした。では次にすれ違いと追い越しについて解説したいと思います。まずすれ違いから。
反対方向から来る青、赤2つの列車があって、上の図のS地点ですれ違いが開始されました。青い列車と赤い列車の先頭部分が一致していることを確認してください。すれ違いが終わるのは、それぞれの列車の先頭がG地点まで進んだときです。そのとき2つの列車の最後尾が一致していることを確認してください。
さて、青い矢印で示した部分が青い列車の進んだ距離、赤い矢印で示した部分が赤い列車の進んだ距離です。両方の矢印をたすとどうなりますか? ちょうどぴったり2つの列車の長さの和になってますね。
このように列車のすれ違いでは、すれ違いが始まってから終わるまでに、2つの列車の進んだ距離の和が2つの列車の長さの和に一致します。また、2つの列車は向き合って進んでいるから、単位時間あたり、速さ(通過算では秒速が多い)の和の分だけ2つの列車は近づくことになり、そのことから次のような公式が作れます。
列車のすれ違い公式
2つの列車のすれ違いにかかる時間=2つの列車の長さの和÷2つの列車の速さの和
和を和で割ることから、僕はこの公式をワワルワと教えています(^^♪
次は追い越しです。
同じ向きに走る2つの列車があって、上の図のS地点で追い越しが開始されました。青い列車の先頭部分が赤い列車の最後尾に一致していることを確認してください。追い越しが終わるのは、それぞれの列車がG地点まで進んだときです。青い列車の最後尾が赤い列車の先頭部分に一致していることを確認してください。すれ違いのときと同じように、青い矢印で示した部分が青い列車の進んだ距離、赤い矢印で示した部分が赤い列車の進んだ距離です。青い矢印から赤い矢印を引くとどうなりますか? 今度もぴったり2つの列車の長さの和になっています。
このように速い列車が遅い列車を追い越すとき、追い越しが始まってから終わるまでに、2つの列車の進んだ距離の差が2つの列車の長さの和に一致します。2つの列車は同じ方向に進んでいるから、単位時間あたり、速さの差の分だけ速い列車が遅い列車に追いつくことになり、このことから次の追い越し公式が作れます。
列車の追い越し公式
速い列車が遅い列車を追い越すときにかかる時間
=2つのの列車の長さの和÷2両の列車の速さの差
こちらは和を差で割りますからワワルサと覚えることを勧めています(*^^*)
ではすれ違いと追い越しの問題を1問ずつ。公式を使えば簡単ですよ。
特急列車は時速108km、長さ200m、急行列車は時速72km、長さ150mです。
(1)特急列車と急行列車がすれ違い始めてからすれ違い終わるまでに何秒かかりますか?
(2)特急列車が急行列車に追いついてから追い越すまでに何秒かかりますか?
(1)
まず時速〇kmを秒速●mに直します。1時間は60×60=3600秒だから、時速は3600で割れば秒速になります。
[特急] 時速108km=時速108000m
108000÷3600=1080÷36=秒速30m
[急行] 時速72km=時速72000m
72000÷3600=720÷36=秒速20m
メモ これらの計算をひとまとめにし、時速〇kmを秒速●mに直すときに3.6で割るという方法があります。逆に秒速●mを時速〇kmに直すなら3.6倍です。
すれ違い公式を使って、
(200+150)÷(30+20)=350÷50=7より、特急列車と急行列車のすれ違いには7秒かかります。
(2)
追い越し公式を使って、
(200+150)÷(30-20)=350÷10=35より、特急列車が急行列車を追い越すには35秒かかります。
ワワルワ、ワワルサの呪文で覚える通過算公式いかがでしたか? どうせ覚えなくてはならない公式なら楽しく覚える方が良いと思います。ただ、公式というのは なぜそうなるのか? を知らずにただ暗記するだけでは、そのまま公式が使える問題以外での応用がきかなくなってしまうから注意してくださいね。この講座で書いた公式の理由も知っておいてほしいですよ。
では今回の講座69は以上です。次回の講座70は新作No.9になると思いますが、どのような内容を書くか現在考え中で未定です。なのでいま予告はできないですが、発表まで楽しみに待っていてくださいね。じゃあそれまでみなさんお元気で~!
カーテンコール
公式を楽しく覚えてもらうのは僕の算数の流儀でもありますが、それは算数の敷居を低くして算数を好きになってほしいからです。だけど公式を覚えておしまいという算数はやはり行き詰まるんですよね。通過算の場合でも、ホームを通過するときに列車が走る距離は〈ホームの長さ+列車の長さ〉ですが、これは列車の先頭がホームにさしかかってから最後尾が抜けるまでという状況下に限定され、列車の最後尾が進入してから先頭が抜けるまでという状況下なら〈ホームの長さ-列車の長さ〉が走行距離です。公式もいいですが、同時に積極的に図を書く算数を心がけてくださいね。
みなさんへの宿題
秒速30mで走る特急列車と秒速18mで走る快速列車が逆方向に走るとき、すれ違い始めてからすれ違い終わるまでに10秒かかりました。この特急列車と快速列車が同じ方向に走るとき、特急列車が快速列車に追いついてから追い越し終わるまでに何秒かかりますか?
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