Newみんなの算数講座19 面積図で解く?比で解く?
今回の速さの問題には甲乙つけがたい2つの有力な解き方があります。むかしホームページでアンケートをとったことがありますが、ほとんど真っ二つの結果でしたね。みなさんはどちらが頭になじむでしょうか?僕の意見は最後に書きますね。
2つの有力な解き方がある速さの問題。それはこんな問題です。
8時に家を出て学校へ行くのに、毎分90mの速さで歩くと始業時刻の5分前に学校に着き、毎分75mの速さで歩くと始業時刻の2分前に着きます。学校の始業時刻は何時何分ですか?また、家から学校までの距離は何mですか?
では有力な2つの解き方を順番に紹介します。
解き方1 面積図を使って解く
次のような面積図を書いて考えます。面積図とは、2つの量の積を面積によって表現する算数ツールです。〈タテ〉×〈横〉が長方形の面積になるのと同じように、速さの問題なら〈速さ〉と〈時間〉をかけた〈距離〉が面積になります。
面積図のタテが速さ、横が時間の経過です。
「分速90mで行くと 始業5分前に着く」
「分速75mで行くと 始業2分前に着く」
この2つの条件を、長方形を重ねて書くことで表現します。
学校までの距離は変わらないから、重なっている2つの長方形の面積は等しく、共通部分のウを取り去ることで、アの面積とイの面積が等しいことがわかります。
イの面積=75×(5-2)=225 →アの面積も225
アの横の長さ 225÷(90-75)=15
よって、分速90mで行くと15分かかることがわかり、始業時刻は 8時+15分+5分=8時20分
家から学校までの距離は 90(m/分)×15分=1350m
無事に解答が求められました。
解き方2 比を使って解く
比が使える生徒ならこちらの解法もかなり有力です。
家から学校までの距離は変わらないので、2つの行き方で、速さの比と時間の比が逆の比になります。
重要メモ 距離が一定のとき、速さの比と時間の比は逆の比になる
分速90mで行く場合と分速75mで行く場合の速さの比は
90:75=6:5
所要時間の比は逆の比になって5:6です。解説の都合で〇で囲んで⑤:⑥と直しますね。
所要時間の差は 5-2=3分で、これが⑤と⑥の差の①にあたるから、⑤にあたる時間は3分×5=15分です。 →分速90mで行くときの所要時間
家から学校まで15分で着いて始業時刻の5分前だから、学校の始業時刻は8時+15分+5分=8時20分
学校までの距離は解き方1と同様に90(m/分)×15分=1350mと求めることができます。
みなさんはどちらの解法を支持したいですか?
僕は中学受験の算数を教え始めて二十数年たちますが、これをどちらで教えるかはいまだに悩ましいです。みなさんの頭になじむ方で解いてくれてよいですが、受験に向けていろいろな算数の問題に対応していくためには、解法のポケット(引き出し)は多い方がよいでしょう。自分の家の卵焼きが塩味で、あまり卵焼きを好きになれなかった子供が、友だちの家で甘い卵焼きを食べて卵焼きの美味しさに感激した…… 僕の師匠がよく父母会で使っていた話ですが、算数をなかなか好きになれなかった生徒が、ある問題のある解き方をすごく気に入って、それをきっかけに算数が大好きになって成績がどんどん伸びたというケースはけっこうありますよ。算数に強くなるためにはいろいろな解き方を知ってほしいですね。
今回はあとがきが長くなりました。それではみなさん、また次の講座でお会いしましょう!もしよかったら、どちらの解き方が好きかコメントらんから教えてくださいね。
カーテンコール
始業時間まで歩いたと仮定して、行きすぎちゃうとか手前にいるとか差集め算を使う解き方もありますが、僕の経験ではあの線分図は生徒の理解があまりよくないです。
みなさんへの宿題
さやかさんが家から学校まで分速60mで歩いていくと始業の1分前に学校に着きますが、担任の先生から「余裕を持って登校しなさい」と注意されたので、分速150mの自転車通学に切りかえたところ、始業の13分前に学校に着くようになりました。さやかさんの家から学校までは何mありますか?
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