Newみんなの算数講座71 分け方の心得
みなさんこんにちは。ニューみん算講座71です。今回も元祖の講座を採用せずに新作講座を書きました。ニューになってからちょうど10番目の新作になります。全編改訂にあたり元祖講座(旧講座)を読み返してみると、70番台前半の講座に内容の不出来さを感じるものが多いです。筆が乗らない時期だったのかな~なんて昔を思い出したりしています。この付近、しばらく新作が多くなると思います。どんな算数が飛び出すか、毎回期待してくださいね。
講座71のテーマは場合の数のジャンルから分け方の心得です。ひとことで分け方と言ってもいろんなパターンがあるんですよ? 〈分けるものが区別できるかどうか?〉〈受け取る側の入れ物が区別できるかどうか?〉 その他個数の条件もしっかり見きわめて考えてほしいと思います。
それでは最初の問題を出しますね。分けるものは違う果物だから区別できます。受け取る側は(1)と(2)で条件を変えました。
りんご、みかん、なし、かきが1個ずつあります。これらを2つのお皿に分ける方法は何通りありますか? (1)(2)の条件下で考えてください。
(1)2つのお皿にA、Bの区別がある場合
(2)2つのお皿を区別しないとき
りんご、みかん、なし、かきの順にア、イ、ウ、エとして解説します。果物の頭文字よりア、イ、ウ、エの方が順序が認識しやすく整理に適していると思います。細かい点ですがマネしてほしいところです。
(1)
果物は4個ありますから、A、Bのお皿に分ける個数は次のいずれかです。
①Aに3個、Bに1個
②Aに1個、Bに3個
③Aに2個、Bに2個
①→Bに分ける1個がア、イ、ウ、エのどれかだから4通りです。
②→①と同様です。Aに分ける1個がア、イ、ウ、エのどれかだから4通りです。
③→ア、イ、ウ、エの4個の中からAに分ける2個を選ぶ組合せの計算です。4C2=6通りです。
これらを合計して(1)の解答は4+4+6=14通りです。
メモa お皿が区別できるという前提は、お皿の色がちがうと考えればわかりやすいと思います。①は青いお皿に3個で赤いお皿に1個、③は赤いお皿に3個で青いお皿に1個です。明らかに別の分け方ですよね?
メモb 「4個と0個に分けること」は自然に考えて除外します。片方のお皿が0個(ナシ)では分けたことになりません。もし0個を認めるときは問題文にその指示がありますね。
メモc 組合せの計算方法は講座14でくわしく解説しています。
(2)
お皿を区別しない場合、(1)で求めた14通りの中に同じ分け方が2つずつ重複しています。下に重複の例を示します。これらは分ける果物をお皿AB間で入れ替えただけなので、お皿を区別しない場合は同じ分け方です。
重複の例
ⅰ) ①の〈A→アイウ B→エ〉と②の〈A→エ B→アイウ〉はお皿をA、Bのように区別しなければ同じ分け方です。お皿を区別しない場合、①の4通りと②の4通りを別に数える必要がありません。
ⅱ) ③の〈A→アイ B→ウエ〉と〈A→ウエ B→アイ〉はお皿をA、Bのように区別しなければ同じ分け方です。お皿を区別しない場合、③の6通りは半分の3通りになります。
このようにお皿を区別しない場合、区別する場合の14通りの中に2つずつ重複があります。お皿を区別しない場合の解答は(1)の半分の7通りです。
メモd お皿の区別をしないというのは、真っ白な同じお皿に分けているイメージです。場合の数の問題では、お皿を区別する・しないの指示がないときは、区別しないと考えます。
次は同じ果物が複数個ある問題です。2枚のお皿は真っ白な同じお皿と考えて区別しませんよ。
次の各問いに答えてください。
(1)りんごが4個、みかんが3個、なしが2個あります。これら9個の果物を2枚のお皿に4個と5個に分ける方法は何通りありますか?
(2)りんごが4個、みかんが3個、なしが3個あります。これら10個の果物を2枚のお皿に5個ずつ分ける方法は何通りありますか?
りんご、みかん、なしの順にア、イ、ウとします。
(1)
どちらか片方のお皿に分ける果物と個数を考えれば済みます。反対側のお皿には残った果物が収まるだけですからね。4個のお皿、5個のお皿のどちらに注目しても同じですが、個数が少ない4個のお皿に注目する方がラクでしょう。
4個のお皿(以下4個皿)に分けるりんごの個数(ア)で次のように分類します。
①4個皿に分けるりんごが4個のとき
②4個皿に分けるりんごが3個のとき
③4個皿に分けるりんごが2個のとき
④4個皿に分けるりんごが1個のとき
⑤4個皿に分けるりんごが0個のとき
①→4個皿が全部アです。これは1通りです。〈 〉内は4個皿に分ける果物です。
〈アアアア〉
②→4個皿にアを3個分けると、4個皿に分ける残りの1個がイかウのどちらかになります。2通りです。
〈アアアイ〉〈アアアウ〉
③→4個皿にアを2個分けると、4個皿に分ける残りの2個がイイ、イウ、ウウのどれかになります。3通りです。
〈アアイイ〉〈アアイウ〉〈アアウウ〉
④→4個皿にアを1個分けると、4個皿に分ける残りの3個がイイイ、イイウ、イウウのどれかになります。ウウウは個数が足りないからできません。3通りです。
〈アイイイ〉〈アイイウ〉〈アイウウ〉
⑤→4個皿にアを分けないと、4個皿に分ける4個をイとウから選ぶことになります。イは3個まで、ウは2個までというリミットに注意してください。次の2通りです。
〈イイイウ〉〈イイウウ〉
①~⑤を合計して求める解答は1+2+3+3+2=11通りです。
このように、違う個数に分けるときは個数の少ない方(この場合は4個皿)に注目し、個数の多い方は考えなくても大丈夫です。上にも書きましたが、個数の多い方には残りの果物が収まるだけだからです。
(2)
(1)との違いは2枚のお皿が同じ個数になることです。ひとまず(1)と同じように考えますが、同じ個数の場合は重複に気をつける必要があります。2枚のお皿は区別されませんが、解説の都合上5個皿a、5個皿bと書きますね。aとbのお皿が入れ替わるだけの分け方は同じ分け方です。
5個皿aに分けるりんごの個数(ア)で次のように分類します。
①5個皿aに分けるりんごが4個のとき
②5個皿aに分けるりんごが3個のとき
③5個皿aに分けるりんごが2個のとき
④5個皿aに分けるりんごが1個のとき
⑤5個皿aに分けるりんごが0個のとき
①→5個皿aにアを4個分けると、5個皿aに分ける残りの1個がイかウのどちらかになります。2通りです。〈 〉内は5個皿aに分ける果物です。
〈アアアアイ〉〈アアアアウ〉
②→5個皿aにアを3個分けると、5個皿aに分ける残りの2個がイイ、イウ、ウウのどれかになります。3通りです。
〈アアアイイ〉〈アアアイウ〉〈アアアウウ〉
③→5個皿aにアを2個分けると、5個皿aに分ける残りの3個がイイイ、イイウ、イウウ、ウウウのどれかになります。4通りです。
〈アアイイイ〉〈アアイイウ〉〈アアイウウ〉〈アアイウウ〉
④→5個皿aにアを1個分けると、5個皿aに分ける残りの4個がイイイウ、イイウウ、イウウウのどれかになります。イイイイ、ウウウウは個数が足りないからできません。3通りです。
〈アイイイウ〉〈アイイウウ〉〈アイウウウ〉
⑤→5個皿aにアを分けないと、5個皿aに分ける5個をイとウから選ぶことになります。イもウも3個までというリミットに注意です。次の2通りです。
〈イイイウウ〉〈イイウウウ〉
①~⑤を合計すると2+3+4+3+2=14通りですが、じつはこの14通りは同じ分け方を2回ずつ数えています。一例をオレンジ色にしました。たとえば5個皿aを〈アアアイイ〉にすると、もう片方の5個皿bには〈アイウウウ〉が残ります。5個皿aの分け方で④の〈アイウウウ〉を数えると同じ分け方を2回数えてますよね。
このように、同じ個数に分けるときは2枚のお皿が逆になっただけの重複に注意しなくてはなりません。解答は①~⑤の合計の半分で7通りです。
メモ 2枚のお皿が青、赤のように区別されるなら14通りです。ちなみに(1)の11通りもお皿が青、赤で区別されるなら2倍の22通りです。(1)も(2)も2枚のお皿は区別しませんが、(2)の場合は個数が同じだから、調べていく過程で重複に気をつけよう!ということですね。
次の問題は。区別できない同じ果物がたくさんあって、受け取る側の人間は名前で区別されています。
マンゴーが7個あります。この7個のマンゴーをのび太、しずちゃん、スネ夫の3人に分ける方法は何通りありますか? (1)(2)の条件下で考えてください。
(1)一個ももらえない人がいてもよい場合
(2)全員が最低一個はもらう場合
計算式一発で済ませてしまうテクニック(カーテンコール参照)もありますが、算数らしくていねいに考えてみます。
(1)
まず、3つの数字の合計が7になる組合せを考えます。一個ももらえない人がいてもよい条件だから0もOKですが、並べ替えについてはあとで考えるようにして、ここでは7-0-0と0-7-0のように数字の並ぶ順序が違うものはひとつにまとめます。
3つの数字の合計が7になる組合せは次の①~⑧です。
①7-0-0 ②6-1-0 ③5-2-0 ④5-1-1
⑤4-3-0 ⑥4-2-1 ⑦3-3-1 ⑧3-2-2
これらの組み合わせはもらう人を考慮していません。もらう人を考慮すれば、たとえば①の場合、7個もらう人がのび太、しずちゃん、スネ夫という3通りがあります。
ではもらう人を考慮するために①~⑧について並び替えを検討します。( )内に示す数字は (のび太、しずちゃん、スネ夫) です。
①④⑦⑧は2つの数字が同じで1つの数字だけが異なります。この場合は3通りの並び替えがあります。①を例に取ると(7、0、0) (0、7、0) (0、0、7) の3通りです。
②③⑤⑥は3つの数字がすべて異なり、この場合は6通りの並び替えがあります。②を例に取ると(6、1、0) (6、0、1) (1、6、0) (1、0、6) (0、6、1) (0、1、6) の6通りです。
①④⑦⑧の4つが3通り、②③⑤⑥の4つが6通りあるから、これらを合計して、求める解答は4×3+4×6=12+24=36通りです。
(2)
全員が最低一個もらうという条件だから0が使えません。(1)で考えた組合せの中で0が含まれないものを選びます。
④5-1-1 ⑥4-2-1 ⑦3-3-1 ⑧3-2-2
④⑦⑧には3通りの並び替えがあり、⑥には6通りの並び替えがあるから 3×3+6=15より、全員が最低一個もらう場合は15通りの分け方があります。
場合の数の分け方の心得、いかがでしたでしょうか?
場合の数というジャンルは算数に限ったものではなく、中高の数学にもつながっていきます。場合の数を本格的に勉強すると驚くべき奥の深さで、今回取り上げた分け方の話だけでも何十ページにわたる内容が書けてしまいます。
今回の心得は場合の数の分け方のほんの序章に過ぎませんが、解説に書いたような手作業を中心に(公式を多用せずに)調べていく算数の姿勢は、難しい問題を解くときにも十分活かせるだろうと思います。場合の数に強くなりたい人は、場合の数ばっかりの問題集を一冊買ってチャレンジしてみるとよいでしょうね。すべての問題を完全にマスターするのは大変でしょうが、自信を持って解ける問題を少しずつ増やしていくことが大事だと思います。
それでは今回の講座71はここまでにします。次回の講座72は元祖講座を保存するか新作に取りかえるか考え中です。楽しみにしてお待ちくださいね。じゃあそのときにまたお目にかかりましょう!(*^^)
カーテンコール
最後の問題を計算式だけで済ますテクニックを紹介します。最初にこれを~ と言われそうですが、やはり算数では調べる作業力を養うために本解説の方法を選んでほしいんですよね(*´з`)
(1)マンゴーを7個の〇、人を区切る仕切りを2本の|で表します。問題の分け方はこれら9個の記号の並べ方で過不足なく網羅できます。
たとえば〇〇|〇〇〇|〇〇はのび太2個、しずちゃん3個、スネ夫2個です。
|〇〇〇〇|〇〇〇はのび太0個、しずちゃん4個、スネ夫3個です。つまり9個の記号が置かれる場所のうち、|が置かれる2ケ所を選ぶ計算をして、問題の分け方は9C2=36通りです。
(2)全員が最低1個もらうときは、のび太、しずちゃん、スネ夫に1個持たせておき、残り4個のマンゴーと2本の仕切りの並べ方です。6個の記号が置かれる場所のうち、|が置かれる2ケ所を選ぶ計算で6C2=15通りです。
みなさんへの宿題
A、B、C、D、E、Fの6人が松の間、竹の間、梅の間に泊まります。
(1)空室があってもよい場合、6人の部屋割りは全部で何通りありますか?
(2)【難】空室を作らない場合、6人の部屋割りは全部で何通りありますか?
解答したい方はページ下のコメントに書いてください。正解不正解をレスさせていただきます。お名前はニックネームでもかまいません。