NEWみんなの算数講座78 2より5が大切!
皆さんこんにちは。
ニューみん算講座の78回目。今回は「2より5が大切!」という題名をつけてみました。不思議な題名でしょう?どうぞ今回も楽しい算数を知ってお帰りになってくださいね。
こんな整数問題がよくあります。
1から100までの整数をすべてかけ算してできる整数をPとします。
P=1×2×3×………×98×99×100
(1)整数Pは一の位から何個の0が並んでいますか?
(2)整数Pは12で何回割り切れますか?
このPの値。巨大な数すぎて実際の値をズバリ特定するのは難しいです。エクセルか何かの計算ソフトを使えば、もしかしたら表示してくれるかもしれませんが(私はやったことありません)、たぶんパソコンのモニターに、左から右までギッシリ数字が並ぶような超巨大整数だと思います。実際の値を知ることが不可能ではないとしても、人間がテストの時間内に突き止められる値でないことは間違いありません。
ではどうすればよいか?
実際の値を求めることはあきらめ、
Pという整数が、どのような素数のかけ算によってできているのか?
それも、すべてを調べるのではなく、問題を解くために必要な部分だけを調べるようにすればよいのです。
ではていねいに解説していきます。
(1)
一の位から並ぶ0の個数は、その整数が10で何回割りきれるか?
ということです。(もちろん商が整数になる割り算で)
たとえば46500という整数は、終わりに0がふたつあるから、10で2回割りきれますね?
このことをふまえ、整数Pを求めるかけ算の100個の整数(1~100)のなかに、10を作れる要素がどれくらいあるのかを考えます。
そしてさらに大切なことは、10という整数は素数ではなく、10=2×5
つまり10という整数は2という素数1個と、5という素数1個がかけ算されてできていることです。
たとえばPのかけ算の式の中にある6(=2×3)が持っている素数の2と、15(=3×5)が持っている5によって、10(=2×5)を1個作ることができます。
このように10という整数は素数2と素数5による共同作品なのですが、ズバリ言うとこの問題の主役は素数5! 素数2についてはまったく無視してしまってかまわないのです!
なぜか?
それは、整数Pを求めるかけ算の式の中に、2の個数は5の個数よりたくさんあるからです。いくら2がたくさんあっても、5の個数がそれに追いつかなければ10を作ることはできません。「2より5が大切」というタイトルの意味がここで理解していただけたと思います。
〈生徒にウケがいい説明方法〉
あまいお団子が30個、からいお団子が20個あるとき、あまからお団子セットは20組しかできません。数が少ない方しかセットの役には立たないですね。
では1~100の整数のなかに、5という素数が何個ふくまれているかを考えてみましょう。
①まず単純に5の倍数の個数を求めると 100÷5=20個です。
【公式】1~Nまでの中にあるAの倍数の個数は N÷Aの割り算の商(余りは無視でよい)
②ところが、25(=5×5)の倍数には、1つの整数のなかに5が2個ずつふくまれているから、その分を追加する必要があります。
1~100の整数の中の25の倍数の個数は 100÷25=4個です。
①+②より、1~100の整数の中にふくまれる5の個数は24個となります。
*②でたしたのは2個めの5の個数です。1個めの5の個数は①に入っています。また、1~100の範囲には5を3個ふくむ整数はありません(5×5×5=125)
いま求めた24個が(1)の答えです。整数Pは一の位から24個の0が並ぶ整数です。
(2)
今度はPが12で割り切れる回数を求めます。
12を素数に分解すると2×2×3です。
だから、12で1回割り切れるためには、2が2個と3が1個必要です。
さて2の個数と3の個数、これはどちらを調べたらよいでしょう?
2の個数の方が多いのは予想できますが、12で1回割り切れるために、2は2個必要ですから、この判断はかなり微妙です。両方調べますね。
〈2の個数〉
①2の倍数の個数を求めると 100÷2=50個です。
②4(=2×2)の倍数には、2が2個ずつふくまれているから、
その追加分を考えます。100÷4=25個です。
③8(=2×2×2)の倍数には、2が3個ずつふくまれているから、
その追加分を考えます。100÷8=12あまり4より12個です。
④16(=2×2×2×2)の倍数には、2が4個ずつふくまれているから、
その追加分を考えます。100÷16=6あまり4より6個です。
⑤32(=2×2×2×2×2)の倍数には、2が5個ずつふくまれているから、
その追加分を考えます。100÷32=3あまり4より3個です。
⑥64(=2×2×2×2×2×2)の倍数には、2が6個ずつふくまれているから、
その追加分を考えます。100÷64=1あまり36より1個です。
①~⑥を合計して、1~100の中にふくまれる2の個数は97個です。
〈3の個数〉
①3の倍数の個数を求めると 100÷3=33あまり1より33個です。
②9(=3×3)の倍数には、3が2個ずつふくまれているから、
その追加分を考えます。100÷9=11あまり1より11個です。
③27(=3×3×3)の倍数には、3が3個ずつふくまれているから、
その追加分を考えます。100÷27=3あまり19より3個です。
④81(=3×3×3×3)の倍数には、3が4個ずつふくまれているから、
その追加分を考えます。100÷81=1あまり19より1個です。
①~④を合計して、1~100の中にふくまれる3の個数は48個です。
さて(2)の解答ですが、12で割り切れるためには2が2個と3が1個必要でした。2は97個ありますが、2は2個ずつ必要だから、
97÷2=48あまり1より、2×2が48組あります。
3も同じ個数で48個です。(たまたまの一致です。このタイプの問題でいつも一致することではないです)
したがって整数Pが12で割り切れる回数は48回ということになります。
この設問では、たまたま一致しましたが、もし回数に差がある場合は少ないほうが解答です。さっき書いたお団子セットの理由ですね。
***
今回は話が長くなってますが、長くなったついでに、ふくまれる素数の個数を簡単に計算する方法があるのでそれも紹介しておきましょう。上で求めた素数2の個数の計算を例にしますね。
下の計算のように、2で次々に割っていきます。割り切れるときと余りが出るときがありますが、大事なのは割り算の商です。(余りは省略してもよいです)
それ以上割ることができなくなったら、商をすべて合計してください。
50+25+12+6+3+1=97
さきほど求めた97個(1~100の中にふくまれる素数2の個数)がわかります。
***
今回の講座、いかがでしたか? 一の位から並ぶ0の個数は、素数5の個数を調べればよいです。また、(2)で1~100までの整数に含まれる2の個数が、3の個数の2倍もあるのはなかなかおもしろい事実ですね。2と3はとなり合った素数なのにこんなに差があるの? 僕も解説を書きながら正直そう感じました。小さな発見だけど整数の不思議さも感じますよね。
2 97個 3 48個 5 24個 7?個 11 ?個
各素数が100までに含まれる個数を記念に残して今回の講座を終わります。?は皆さんが調べてくださいね。ではまた次回をお楽しみに~。