Newみんなの算数講座63 てんびんの弱点

Newみんなの算数講座63 てんびんの弱点

みなさんこんにちは。ニューみん算講座63を始めます。

今回は食塩水の問題の中で、講座3で説明した〈てんびん〉だけでは解決できない問題、てんびんがまるで役に立たない問題を紹介します。てんびんは食塩水問題の強力ツールではありますが、万能ではないです。僕の経験では、てんびんだけで機械的に解決できる食塩水の問題は五割~六割。それ以外の問題では、部分的にてんびんが使えることはあっても、食塩水が変化する様子を正しくしっかりと捉えることが大事ですね。

ではさっそくそんな問題を出してみます。1番はてんびんだけでは足りない問題、2番はてんびんを使う余地がない問題です。

問題1
2つの容器A、Bがあり、Aには12%の食塩水が300g、Bには7%の食塩水が200g入っています。両方の食塩水から同じ量の食塩水を取り出し、Aから取り出したものをBに、Bから取り出したものをAに入れたところ、A、Bの食塩水の濃度は等しくなりました。初めに取り出した食塩水は何gずつですか?

残念ながらこの問題は、機械的にてんびんに任せるだけでは解決しません。てんびんに加え、食塩水を交換するときの大切な見方を理解してください。
下の図を見てください。

ボックス内の数値は、上段が濃度(%)、2段目が食塩水の重さ(g)、3段目があるときは食塩の重さ(g)を表しています。また、同じ濃度の食塩水を同じカラーで表示しています。

食塩水AとBからそれぞれ□gの食塩水を反対側に移します。どちらの食塩水も□g渡して□g受け取るから、交換後の食塩水の重さは初めの食塩水の重さと同じになります。その結果両方の食塩水の濃度が等しくなるわけですが、このとき少し浮かびにくいのですが次のポイントがとても重要です。

2つの食塩水間で同量交換し、濃度が等しくなったときの考え方

その1
最終的に濃度が等しくなった食塩水には、食塩水と同じ比率で食塩が溶けています

その2
最終的に等しくなる濃度は、初めにある食塩水を混ぜたときの濃度と同じです

その1、その2どちらを使っても最終的な食塩水の濃度を求めることができます。ここではその1を使います。
交換後の食塩水Aは300g、食塩水Bは200gです。この比率は3:2ですが、この比率と同じ比率で食塩が溶けていないと、2つの食塩水の濃度は同じになりません。ボックスに示したように食塩の総量は初めの状態の計算から36+14=50gです。この総量が変わることはないから(全体としての食塩は増えも減りもしていない)、交換後のA、Bに溶けている食塩は50gを3:2に配分した30gと20gです。食塩水Aで計算して、交換後の濃度は30÷300=0.1=10%です。(ボックスの△%は10%)
*その2も調べてみてください。初めの状態でAとBを混ぜても10%の食塩水になりますよ?

ここまでくればあとはてんびんに任せて大丈夫そうです。12%の食塩水と7%の食塩水を混ぜて10%の食塩水が300gできるというてんびんですね。上の図でブルーとクリーム色を混ぜて紫色になるところです。左右どちらの混合に注目してもかまいませんが僕は左の混合でてんびんを書きました。

てんびんはこんな感じになりますね。7%の食塩水300×2/5=120gと12%の食塩水300×3/5=180gを混ぜると10%の食塩水が300gできます。求める□gは7%の方の120gですね。つまりAの容器に12%の食塩水を300-120=180g残し、そこにBの容器からやってきた7%の食塩水120gを加えると、Aの容器に10%の食塩水が300gできるということです。
*このてんびんは容器Aで10%の食塩水300gができることに注目しました。容器Bで10%の食塩水200gができることに注目しても同じように解けます。
*てんびんについては講座3でくわしく解説しています。


問題1はてんびんも使いましたが、次の問題2ではてんびんが使える余地はないです。ではその問題2です。

問題2
坂本クンは15%の食塩水100gを作る予定で水100gに食塩15gをとかしました。ところが、できた食塩水が15%でないことに気づき、食塩水をある量だけ捨て、さらに食塩をある量だけとかして15%の食塩水100gを作りました。坂本君が捨てた食塩水の量と、あとでとかした食塩の量はそれぞれ何gですか?

この問題は、例年悩んで迷路に入り込んでしまう生徒がたくさんいます。食塩水を混ぜるわけではないから〈てんびん〉を使う余地はありません。みなさんは冷静に対処できますか?

坂本君が間違えて作った食塩水と、作り直した正しい食塩水を比べます。
【M 間違いの食塩水】
食塩15g 水100g 食塩水115g 濃度15/115=3/23

【R 正しい食塩水】
食塩15g 水85g 食塩水100g 濃度15/100=15%

Mの食塩水をRの食塩水に直したいわけですが、食塩水を15g減らすとは考えずに、水を15g減らすと考えてください。
Mの食塩水の濃度は3/23だから、水の占める割合は1-3/23=20/23
よって、Mの食塩水が水を15g含むための食塩水の量は、□g×20/23=15gを逆算して15÷20/23=17.25g
つまり、Mの状態から食塩水17.25gを捨てれば水を15g減らすことができます。

ところが
このことで水を15gを減らすことはできますが、食塩水17.25gの中には17.25×3/23=2.25gの食塩が含まれていて、それも同時に捨てられてしまうから、その分の食塩を補わなくてはなりません。よって、あとでとかした食塩の量は 2.25gです。
*17.25-15=2.25gでもかまいません。

問題2の解答 捨てる食塩水17.25g あとでとかした食塩2.25g


以上、食塩水の問題にはてんびんだけでは解き切れない問題や、てんびんが関係しない問題もあるというお話でした。たくさんの塾が食塩水のてんびんをはやらせちゃったものだから、入試問題ではてんびんだけでは済まない問題も半分はありますね。ほとんどのテキストや問題集に食塩水だけのページがあると思いますから、今回の講座のような問題を見つけて練習を積んでくださいね。食塩水問題ならなんでもまかせろ!そんな頼もしい人がいっぱい現れることに期待したいと思います。
それでは今回の講座63を終了します。次回の講座64は元祖のボツ(廃止)が決定しています。何が飛び出すでしょうか?どうぞお楽しみに~!

カーテンコール
問題1で容器Aに最初に溶けている食塩は36g、交換後に溶けている食塩は30gです。6gの食塩が減少してますね。もちろん容器Bでは6g増えています。このことに注目し、てんびんを用いない解法もあります。もしABの相互交換が1gだったら容器Aでは1g×0.12-1g×0.07=0.05gの食塩が減るはずです。実際の減少は6gだから6÷0.05=120gの交換だったわけですね。え?こっちの方が早くてラク? そうかもしれませんね。算数はいろいろな引き出しが持てるから楽しいのです(^^)/ 講座25の山縮め法がこの考え方と似てますね。ぜひどうぞ!

みなさんへの宿題
容器Aには250g、容器Bには400gの食塩水が入っています。まず、Aから100gの食塩水を取り出してBに入れ、よくかき混ぜてBから300gの食塩水を取り出してAに入れました。その結果、Aは12%、Bは16%の濃度になりました。Bの食塩水の初めの濃度は何%ですか?

解答したい方はページ下のコメントに書いてください。正解不正解をレスさせていただきます。お名前はニックネームでもかまいません。