NEWみんなの算数講座87 ニセつるかめ算
みなさん、こんにちは。ニューみん算講座87回目です。
今回は中学受験生のみんなが「つるかめ算」と間違えてマゴマゴしてしまうことがあるニセつるかめ算を取り上げようと思います。確かに問題文の雰囲気はつるかめ算とよく似ています。でも肝心なところがつるかめ算ではなく、ニセモノだとわかります。解説をよく読んで、みなさんはホンモノのつるかめ算とニセつるかめ算をしっかり区別できるようになってくださいね。
本題に入る前に、いままでこの算数講座で書いてきた「つるかめ算関連」の講座を挙げておきます。つるかめ算を基本からおさらいしたい人は、ぜひ参考にしてください。
第28回 つるかめ算で解く図形問題 ~つるかめ算の基本解説あり
第29回 つるかめ算の意外な教え方 ~つるかめ算の特殊解法
第54回 つるかめとんぼ算 ~3量のつるかめ算
*リンクは貼るとみなさんが迷い子になりそうなので貼りません。一度トップページに戻り、目次からお入りください。
ボクの処女作 つるかめ算が3時間でマスターできる
今はだいぶ著作も増えましたが、この本は僕が生まれて初めて出版した本です。なかなか名作(のつもり)なんですが、小さな出版社だったので、残念ながら現在増刷はされていません。全国の図書館にはありますね。アマゾンだと中古の出品だと思います。(本をクリックするとアマゾンです)
それではここからが本題です。噂のニセモノを出題しちゃいましょう!
あるお菓子屋さんで、あんドーナッツとシュークリームを合わせて150個作りました。あんドーナッツ1個を作るのに必要な砂糖は12g、シュークリーム1個を作るのに必要な砂糖は15gです。また、あんドーナッツ全部を作るのに必要な砂糖は、シュークリーム全部を作るのに必要な砂糖より342g多いです。このとき、あんドーナッツとシュークリームの個数をそれぞれ求めなさい。
もし、あんドーナッツ全部を作るときの砂糖(g)と、シュークリーム全部を作るときの砂糖(g)の和がわかっているならつるかめ算です。
しかしこの問題でわかっているのは和ではなく差です。あんドーナッツを全部作るときの砂糖(g)と、シュークリームを全部を作るときの砂糖(g)の差が示されてますよね?和ではありません。 ここがホンモノとニセモノの違いです。わずかな違いと思うかもしれませんが、つるかめ算では和の条件が大事であり、差の条件になっているときは、それはもうつるかめ算ではないのです。残念ながら、上の問題はニセつるかめ算です。
出題してしまった以上、上のニセつるかめ算の対策のお話をしておきましょう。
1個あたりの砂糖の使用量はシュークリームの方が多いのに、全体としては逆転してますから、そのことからあんドーナッツの方が個数が多いという予想ができますね。
まずはあまりお勧めしない解き方から。
〈1を使った式でがんばる…お勧め度/C〉
あんドーナッツの個数を1、シュークリームの個数を1とします。
*Webではカラーが使えるのでこうしましたが、実際解くときにはマル1、シカク1のように数字を○や□で囲むとよいです。
次のアとイの式は簡単に作ることができますね。
1+1=150…ア (個数で作った式)
1×12ー1×15=342
12-15=342…イ (使う砂糖の量で作った式)
*1の12倍は12と書いてかまいません。もし1をマル1とするなら、12倍するとマル12です。
アの式を12倍して
12+12=1800…ウ
ウの式とイの式を比べます。
12+12=1800…ウ
12ー15=342…イ
ウの式は12に12をたしていて、イの式は12から15を引いています。すると、ウの式とイの式の左辺の差は12と15をたした27になります。
*同じものに対して12を加えたものと15を引いたものでは27の違いがあります。
つまり、27=1800ー342=1458
1=1458÷27=54個 … シュークリームは54個
150ー54=96個 … あんドーナッツは96個
解けましたね。でもこの解き方はあまり算数っぽくはないです。どちらかといえば数学ですね。もちろん間違ってませんから使ってくれて大丈夫ですが、もう少し算数らしい解法も紹介しますね。
〈極端な場合から考え始める…お勧め度A〉
150個全部があんドーナッツだったとムリヤリ仮定します。
*シュークリームではなく、全部をあんドーナッツにする理由は、最初に書いたように、あんドーナッツが多いことが前もって予想できているからです。
すると、
あんドーナッツの合計の砂糖の量(以下、あん合)は12×150=1800gになり、シュークリームの合計の砂糖の量(以下、シュー合)は15×0=0gになるから、その差は当然1800ー0=1800gです。
あんドーナッツを1個減らしてシュークリームに変えてみます。
あん合は12×149=1788g、シュー合は15×1=15g
この差は1788ー15=1773gです。
お気づきになりますか?
最初の極端な状態(あん150個、シュー0個)から、あん1個をシュー1個に変えて(あん149個、シュー1個)にすると、あん合とシュー合の差は1800ー1773=27g少なくなるのです。
まもなく解答に着陸です。シートベルトをご確認ください(笑)
あん合とシュー合の差が342gになるためには、最初の極端な状態から考えて、あん合とシュー合の差が1800ー342=1458g少なくなる必要があります。
あんを1個減らす(=シューを1個登場させる)と、あん合とシュー合の差は27gずつ小さくなるから、
1458÷27=54個 これが減らしたあんドーナッツの個数、つまりシュークリームの個数です。
あんドーナッツの個数は150ー54=96個ですね。
こちらの方がより算数らしい考え方と言えるでしょう。
***
ニセつるかめ算を理解していただけたでしょうか?
じつは中学や高校で方程式を習うと、ホンモノもニセモノもあまり関係がなくなります。一括して方程式で処理できるからです。しかし算数は方程式に頼らず、頭を柔らかくする思考の場ですから、そのためにはこうした区別がとても大切なのです。「なぜ算数では方程式を教えない?」というのは愚問です。釣りざおを使う釣りもしたことがない人に、いきなり電動リールの釣りをさせたらどうなります?釣りの基本を知らない無茶な釣り人になりそうですよね。算数に方程式(電動リール)が無用なのも同じことですね。
では今回はこれで終わりにします。また次の講座を楽しみに待っていてくださいね~。
カーテンコール
算数の算数たるゆえんはアイデア発動にあります。式を作り、機械的に答えを出すだけでは、算数と数学の違いがなくなってしまいます。そこを伝えたくて、お勧めしない解き方とお勧めの解き方をセットにしてみました。今回の問題では後者の「極端なケースから正解に近づけていく」という部分がとても算数らしいアイデアです。前者は数学でリカバーがききます。算数の知恵としては後者を大事にお持ちくださいね。
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