Newみんなの算数講座46 辞書的順序のススメ
みなさんこんにちは。ニューみん算46回目の講座です。
今回はですね~。算数にもマナーがある!というお話をしましょう。どういうマナーかというと、場合の数の問題を考えるときの数え上げのマナーです。場合の数ではいろいろなパターンがありますよね? それを調べるとき、思いついた順に好き勝手に挙げていても高い正解率はおぼつかないと思います。場合の数の正解率を上げるために、ぜひ今回の講座で数え上げのマナーを身につけてくださいね。
みなさんの家に国語辞典ありますよね? あの国語辞典で言葉が出てくる順番を知ってますか? そうそう、あ・い・う・え・お・か・き・く・け・こ……の五十音順です。まず単語の一番上のひらがなが五十音順。それが同じなら二番目のひらがなが五十音順です。以下、二番目も同じなら三番目、三番目も同じなら四番目の五十音順です。それがどうしたかって? 今回のテーマにそのことが大いに関係あるのです。先に問題を出しちゃいますね。たとえばこんな問題。
0、1、2、3、4、5のカードが1枚ずつあります。このうち3枚のカードを並べてできる3の倍数は全部で何通りありますか?
場合の数でよく出そうな問題ですよね。この問題の解答を簡単な計算ですぐに求めることはできるでしょうか?
ノーです。使える数字が0から5までに限られてますし、3の倍数という条件も加わってますから、答えをすぐに出す公式などはありません。こうした問題にはどうしても調べる作業が必要になるのですが、人間とは案外そそっかしいもので、何のルールもなしに調べようとしてもモレやダブりが生じてしまいがちです。たまたまうまくいくことはあるでしょうが、最初にも書いた正答率という意味では行き当たりばったりの調べ方はできるだけ避けたいところです。
そこで、場合の数のパターンを調べるときにいつも守るルールを決めておこう!というのが今回の講座のテーマです。タイトルに使った辞書的順序(じしょてきじゅんじょ)という言葉を覚えてください。この言葉の意味は、場合の数でパターンを調べるときは国語辞典の順番をマネをしよう!ということです。
次のルールを読んでください。
場合の数 辞書的順序のルール
国語辞典が「あ・い・う・え・お・・・」の順番になっているように、
場合の数のパターン調べは「1・2・3・4・5・・・」の順番を守ること!
*今回のように0をふくむ問題では0を1より優先させてください
意味わかりますか? 場合の数でパターンを調べるとき、1が出せるなら1を先に出す→1が出せなくなったら2を出す→2が出せなくなったら3を出す……
国語辞典で「あ」が「い」より先に出て、「い」が「う」より先に出るのと同じ要領ですね。1が「あ」、2が「い」、3が「う」。そんな感じです。0が使えるなら0が最優先ですよ。
では上で出した問題を解いてみますね。
3の倍数には各位の数字の和が3の倍数という性質があります。(講座6参照)
この性質を利用して0、1、2、3、4、5のカードから、和が3の倍数になるような3枚のカードの組合せを考えます。たとえば1、2、3を選べば和が6になり3の倍数が作れます。しかし思いついた順番に挙げていくのはよくありません。思いついた順番では、見つけられるパターンもあるでしょうが、気づかずに抜かしてしまうパターンがあっても全然不思議ないです。そこで辞書的順序のルールが大切になるのです!
3つの数字を入れる箱を□□□として説明しますね。
これから3つの数字の和が3の倍数になるパターンを辞書的順序で挙げていきますが、123と231のように順番だけちがうものはひとつとして数えます。この理由はあとで書きます。
手順① □を辞書的順序最優先の0にします。
・□を1にします。そして3つの数字の和が3の倍数になるように□にあてはまる数を考えます。次の2つのパターンが発見できます。
パターンA 012 (和が3)
パターンB 015 (和が6)
・□を2にします。3つの数字の和が3の倍数になるように□にあてはまる数を考えると次のパターンが発見できます。
パターンC 024 (和が6)
*021はパターンAの012と順番がちがうだけだから不可です。この段階のパターン調べでは右の数字が左の数字より小さくなるものは選ばないでください(理由後述)
・□を3にしたときは新しいパターンがありません。
・□を4にします。次のパターンが発見できます。
パターンD 045 (和が9)
・これ以上□を増やせないから手順①は以上です。
手順② □を0の次に優先度が高い1にします。
・□を2にします。次のパターンが発見できます。
パターンE 123 (和が6)
・□を3にします。次のパターンが発見できます。
パターンF 135 (和が9)
・手順②は以上です。
手順③ □を2にします。
・□を3にしたとき次のパターンが発見できます。
パターンG 234 (和が9)
手順④ □を3にします。
・□を4にしたとき次のパターンが発見できます。
パターンH 345 (和が12)
手順終了 □を4以上にするとうまくいくパターンがありません。パターン調べは以上です。
このように和が3の倍数になる3枚のカードの組合せを、パターンAからパターンHまで調べ上げることができました。辞書的順序を守って調べたからモレやダブりはありません。□は0から順に! その段落の中でも□は小さい方から! 辞書的順序の感覚をつかんでいただけましたか?
さて、問題の解答ということになりますと、パターンAからパターンHについて、数字の並び替えが何通りあるか?を考えなくてはなりません。このことを最後にまとめて考える予定で、上のパターン調べでは123と231のように順番だけちがうものは区別しなかったのです。また、012では3ケタの整数にならないと考えた人がいるかもしれませんが、並び替えれば120のように3ケタの整数になります。だからパターン調べでは012もしっかりと候補です。まずは数字の組み合わせだけを考え、あとから並び替えを考える! それがこうした問題の鉄則ですね。
パターンA~Dは3つの数字のなかに0をふくんでいるから、それぞれ4通りの並び替えができます。パターンAを例にとれば 102、120、201、210 の4通りです。
パターンE~Hは3つの数字のなかに0がないから、それぞれ6通りの並び替えができます。パターンEを例にとれば 123、132、213、231、312、321 の6通りです。
パターンA~Dで4通りずつ、パターンE~Hで6通りずつの並び替えがあるから、3枚のカードを使って作れる3の倍数は全部で4×4+6×4=16+24=40通りです。
お疲れさまでした。答えが出せましたね。最後にもう一度まとめておきますよ。今回のような問題では、まず最初に辞書的順序を守って組合せのパターンを調べ、そのあとでそれぞれのパターンの並び替えを考えましょう。並び替えを検討する後半も大事なのですが、それ以前にモレやダブりがないよう組合せを上手に見つけなくては元も子もないです。一番良くないのはやみくもに挙げることですね。40通りもある解答をやみくもに挙げて正解したら偶然の産物じゃないかな。辞書的順序のススメを忘れないようにしてくださいね。
それではみなさん、また次の講座で元気にお目にかかりましょう!
カーテンコール
0から5までの6枚のカードを使って3ケタの整数を作ると、全部で5×5×4=100通りの整数が作れます。任意に整数を抽出すると、3の倍数は3分の1の割合で存在するはずですが、解答の40通りは100通りの3分の1を超えています。不思議な感じがしますが、このことからも 解答をすぐに求める簡単な公式はなく、辞書的順序に沿ったていねいな調べが必要なことをおわかりいただけるかと思います。
みなさんへの宿題
1、2、3、4、5、6のカードが1枚ずつあります。このうち3枚のカードを並べてできる3の倍数は全部で何通りありますか?
解答したい方はページ下のコメントに書いてください。正解不正解をレスさせていただきます。お名前はニックネームでもかまいません。