Newみんなの算数講座7 自分で決めてよい池の長さ

Newみんなの算数講座7 自分で決めてよい池の長さ

みなさんは算数県にある旅人池を知ってますか? 知るわけないですね。ボクの指導上の創作ですから。旅人池はどんなくわしい地図にものってません。それは旅人池が毎日のように大きくなったり小さくなったりを繰り返すので、正確な大きさが測定できず、地図にのせることができないのです。ある日訪ねた学者は周囲100mほどの小さな池だったといいますが、他の日に訪ねた学者は琵琶湖より大きく見えたといいます。

もうなにがなんだかわからない前置きでしたか?
でももう少しがんばって読んでください。じつはね、算数の旅人算という文章題の中に、周りの長さを自由に変えられる不思議な池が登場するんですよ。それはこんな問題のときです!

ある池の外周を1周するのに、麻生君は30分、安倍君は20分かかります。
この池の外周のある地点から、2人が同時に出発して反対方向へ歩いていくと、2人は何分後に出会いますか?

旅人算に慣れてない人は、条件の少なさが気になったかもしれません。たしかに池の外周の距離も2人の速さも問題にはまったく示されてません。
こういう問題のときこそ旅人池の話を思い出してほしいのです。

先に大事な結論を書いてしまいましょう。

池の外周の距離は、問題を解く人が自由な数に勝手に決めてかまいません。

これぞまさに旅人池テクニック!
池の外周は100mでも30キロでも2000キロでも、どんな距離でも全部OKです。

では実際に、池の外周を600mに決めた場合と1500mに決めた場合で確かめてみましょう。600や1500に決めたのは、麻生君、安倍君の所要時間で割り切れる数だからです。

ア 池の1周を600mにした場合
麻生君の分速 600m÷30分=20m/分
安倍君の分速 600m÷20分=30m/分

池の外周を同じ地点から反対方向に進むと、
2人は1分間に20+30=50mずつ近づくから、
600mを出会うまでにかかる時間は 600÷50=12分

イ 池の1周を1500mにした場合
麻生君の分速 1500m÷30分=50m/分
安倍君の分速 1500m÷20分=75m/分

池の外周を同じ地点から反対方向に進むと、
2人は1分間に50+75=125m近づくから、
1500mを出会うまでにかかる時間は 1500÷125=12分

ね?同じになるでしょう?
これで池の外周の距離を好きな数に自由に決めてよいことを納得してもらえたと思います。
あ、どんな距離でもいいとは書きましたが、なるべく割り算するとき計算が楽な数を選んだ方がいいですよ。

ではもう一問。ストーリーはちがいますが、この問題でもいまの考え方が同じように使えます。

ある仕事をするのに、桃子さん1人だと10日かかり、さくらさん1人だと15日かかります。この仕事を2人ですると、仕事は何日で終わりますか?

これはとても有名な仕事算です。算数をくわしく知らない人でも、旅人算、仕事算、つるかめ算あたりの名前は知ってるんじゃないかな?

この仕事算では、全体の仕事量を好きな数に決めてもらって大丈夫です。

たとえば全体の仕事量を30にすると(10日と15日の最小公倍数)
桃子さんの1日の仕事量は30÷10日=3
さくらさんの1日の仕事量は30÷15日=2
となります。
2人で一緒に仕事をすると1日で3+2=5の仕事ができるから、
仕事が終わるまでの日数は30÷5=6日です。

はじめの旅人算でも次の仕事算でも、出題者が書いてない条件があります。問題を解く人は、その条件が不要であることを見抜く必要があります。言いかえれば、書いてない条件がどんな数であっても、答えが同じになることを知っていてほしいのです。
ふつう算数の問題で、数値を自分で決めることは許されません。出題者が与えた数値のなかで解くのが常識ですからね。その意味で今回取り上げた問題は特長のある問題ということができるでしょう。こうした問題を見かけたとき、「これは自分で数を決めてよい旅人池の問題だ!」
いつかみなさんがこんな発想をしてくれることに期待したいと思います。

僕が算数の解法にいろいろな創作をするのは、記憶はインパクトだと思っているからです。人間はインパクトが強い覚え方をしたものをなかなか忘れません。僕は中1の頃、ブルガリアの首都を、ブルガリア→ヨーグルト→やわらかい→ソフト→ソフィアと覚えましたが、四十年たったいまでもまったく忘れる気配がないですよ?
ものごとを忘れたくないときは、インパクトがあるストーリーと一緒に覚えておくとよい
みなさんも大事な勉強をするときは、オリジナルのストーリーをいろいろ考えて一緒に覚えるようにしてくださいね。では今回はこのへんでおしまいにしましょう。

カーテンコール
進学塾のテキストや参考書では、外周の距離や仕事の総量を1とする解説が多いようです。1でも大丈夫ですが僕はやりません。途中の過程が分数だらけになるんですよね。そして「自分の好きな数でよい」ことにはあまり触れられてません。ぜひ身につけてほしい大事な感覚だと思っている僕には、それがなんとも不思議で仕方ないです。

みなさんへの宿題
からの水そうにA管とB菅を両方使って水を入れると12分で満水になり、A管だけを使って水を入れると30分で満水になります。B管だけを使って水を入れると何分で満水になりますか?

解答したい方はページ下のコメントに書いてください。正解不正解をレスさせていただきます。お名前はニックネームでもかまいません。