Newみんなの算数講座67 百五減算
みなさん、こんにちは。
今回のニューみん算講座67はむかし書いた元祖講座の改訂ではなく、こちらのサイトで新しく書いた講座です。内容は前回予告していた百五減算(ひゃくごげんざん)です。百五減算とは、古代中国の南北朝時代(西暦439年~589年)に書かれた算術書・孫子算経(そんしさんけい)に載っていた整数問題で、中国では中国式剰余定理と呼ばれ、百五ずつ減らすという解き方を表した和名が百五減算です。
「こんな素晴らしい考え方が千五百年も前からあったのか!?!?」という驚きを隠せない先人の見事な知恵ですが、正直この内容を説明するのはとても難しいです。インターネットや書籍でも時折紹介されてますが、僕が読んでもスッキリしない説明が多いです。話せばそうでもないけど文章での説明が大変なんですよ百五減算って(*´з`)
でも先人の見事な知恵をひとりでも多くのみなさんにお伝えできるよう、一生懸命書いてみますね。ややこしいことは初めに断っておきます。もの足りない説明になるかもしれませんが、そこはみなさんの気合いでカバーしてくださいね。しっかり理解できたときの快感は他の問題に勝るのではないかと思います。では百五減算の問題を出しますね。
3で割ると1余り、5で割ると3余り、7で割ると2余る一番小さい整数を求めてください。
問題はとてもシンプルです。百五減算というのは、3で割ったときの余り、5で割ったときの余り、7で割ったときの余りからもとの整数を求める問題のことなんです。
3と5と7の最小公倍数は? そうそう105ですよね。百五減算の百五は3と5と7の最小公倍数の105のことです。この105の使い方については解説の中で書きます。
まずは先に答えを出してしまいましょう。解説のために「3で割ると1余る」をア、「5で割ると3余る」をイ、「7で割ると2余る」をウとしますね。以下の手順①~⑤がまさに百五減算です。
手順①
アを満たし、5と7(ア以外の割る数)で割ると割り切れる数を探します。
いくつもありますが最小の数でよいです。
5と7で割り切れる最小の数は35です。しかし35÷3=11…2だからアを満たしません。
5と7で割り切れる二番目に小さい数は70です。70÷3=23…1。これはアを満たしています。
アを満たし、5と7で割り切れる数は70です。
手順②
イを満たし、3と7(イ以外の割る数)で割ると割り切れる数を探します。
3と7で割り切れる最小の数は21です。しかし21÷5=4…1だからイを満たしません。
3と7で割り切れる二番目に小さい数は42です。42÷5=8…2。これもイを満たしません。
3と7で割り切れる三番目に小さい数は63です。63÷5=12…3。これはイを満たしています。
イを満たし、3と7で割り切れる数は63です。
手順③
ウを満たし、3と5(ウ以外の割る数)で割ると割り切れる数を探します。
3と5で割り切れる最小の数は15です。しかし15÷7=2…1だからウを満たしません。
3と5で割り切れる二番目に小さい数は30です。30÷7=4…2。これはウを満たしています。
ウを満たし、3と5で割り切れる数は30です。
手順④
手順①~③で求めた3つの数をたします。
70+63+30=163
この163はア、イ、ウの条件をどれも満たしています。ただしこれが最小ではなく、まだ解答ではありません。
手順⑤
手順④で求めた整数から105を引けるだけ引いた数がこの問題の解答です。
163-105=58
これ以上105を引くことはできないからこの問題の解答は58です。
確かめてみましょうか。
ア 58÷3=19…1 ok
イ 58÷5=11…3 ok
ウ 58÷7=8…2 ok
どの条件もちゃんと満たしてますね。無事に解答は出てきました!
解答は無事に出ましたけど、まだ出し方の手順を示しただけですからね。ではここからいま行った手順の意味について説明していきます。
手順①の70は3で割ると1余り、5と7で割ると割り切れる数です。
手順②の63は5で割ると3余り、3と7で割ると割り切れる数です。
手順③の30は7で割ると2余り、3と5で割ると割り切れる数です。
これらを加えた手順④の163は3で割ると1余り、5で割ると2余り、7で割ると3余る数のひとつです。
メモ 手順①~③は順不同で、どの順番で求めても大丈夫です。僕は割る数が3、5、7の順になるようにしました。
おそらく手順④で3つの数をたす意味がわかりにくいと思うのですが、
手順①の70が3で割ると1余る数だから、それに手順②の63と手順③の30を加えた163も3で割ると1余る数です。なぜなら63と30は3で割り切れる数だからです。
同様のことがあと二つ言えます。
手順②の63が5で割ると3余る数だから、それに手順①の70と手順③の30を加えた163も5で割ると3余る数です。なぜなら70と30は5で割り切れる数だからです。
手順③の30が7で割ると2余る数だから、それに手順①の70と手順②の63を加えた163も7で割ると2余る数です。なぜなら70も63も7で割り切れる数だからです。
上の3つの太線部をまとめてください。163は3で割ると1余り、5で割ると3余り、7で割ると2余る整数です。つまり手順①~③で求めた数をたすことで、ア、イ、ウの3つの条件をすべて満たす数ができています。
Nで割るとA余る数+Nで割り切れる数=Nで割るとA余る数
今回の百五減算での大事な視点です。簡単な例で試してください。たとえば4は3で割ると1余る数ですが、この4に3で割り切れる数をいくつたしても3で割ると1余る数です。4+3=7、4+6=10。7も10も3で割ると1余ります。当たり前といえば当たり前ですが、意外と考えがいかないところみたいです。
最後に手順⑤で105を引きました。このことの意味は、
105は3、5、7の最小公倍数だから、3つの条件ア、イ、ウをすべて満たす163に対し、105をいくつたしてもいくつ引いても3つの条件をすべて満たすことに変わりない
ということです。たとえば163+105の268も条件をすべて満たしますし、163+105×2の373も条件をすべて満たします。この問題は最小の整数を求める問題だから163から105を引いた58が正解になりました。
すべての条件にあてはまる数が一つ見つかると、あとは105ずつ引く(たす)ことで条件にあてはまる数が次々に見つかります。ここが百五減算の名前の由来ですね。割る数3、5、7は変わりませんが余りの部分は変わりますから、百五減算の解き方を次のように整理してまとめておこうと思います。
百五減算の解き方
3で割ると〇余り、5で割ると□余り、7で割ると△余る数は次のように求めます。
公式手順①
5と7の公倍数の中から、3で割ると〇余る数を探します。3で割ったときの余りは1か2だから、調べるのは35と70だけで大丈夫です。探す数の候補をオレンジにしました(以下同)。
・〇=1なら70です。70を3で割ると1余ります。
・〇=2なら35です。35を3で割ると2余ります。
公式手順②
3と7の公倍数の中から、5で割ると□余る数を探します。5で割ったときの余りは1~4だから探す数の候補は以下の4つです。
・□=1なら21です。21を5で割ると1余ります。
・□=2なら42です。42を5で割ると2余ります。
・□=3なら63です。63を5で割ると3余ります。
・□=4なら84です。84を5で割ると4余ります。
これは余りと探す数がきれいに比例しています。21×□で探す数になるという理解で大丈夫です。
公式手順③
3と5の公倍数の中から、7で割ると△余る数を探します。7で割ったときの余りは1~6だから探す数の候補も6つですが、これも余りと探す数の間にきれいな比例関係があります。15×△=探す数です。
・△=1なら15です。15を7で割ると1余ります。
・△=2なら30です。30を7で割ると2余ります。
・△=3なら45です。45を7で割ると3余ります。
・△=4なら60です。60を7で割ると4余ります。
・△=5なら75です。75を7で割ると5余ります。
・△=6なら90です。90を7で割ると6余ります。
公式手順④
公式手順①~③で探した数(オレンジの数のいずれか)をすべてたすと、問題の条件をすべて満たす数のひとつが求められます。
公式手順⑤
公式手順④で求めた数から105をいくつ引いてもいくつたしても条件を満たす数です。問題の指示に合わせてふさわしい数に調整してください。たとえば最小の整数という指示なら、公式手順4で求めた数から105を引けるだけ引きます。
メモa
余りの〇、□、△が0、つまり割り切れるという場合は想定しませんでした。もし想定するなら、公式手順1~3で探す数は0でよいです。
メモb
百五減算は、相手の年令を〇、□、△を手がかりにして暗算で言い当てるゲームの題材にもなっています。相手の年令を3、5、7で割ったときの余りを聞き、その答えに応じて公式手順1~3のオレンジの数をたします。105が引けるときは引いてくださいね。大変そうに感じるかもしれませんがそうでもないです。3で割った余り(〇)が1なら70、2なら35。そのどちらかに21×□と15×△をたすだけです。いい感じの暗算練習になりますよ? ぜひお友だちやご家族でお試しください。
メモc
互いに素である3つの整数なら百五減算をアレンジしたものが作れます。たとえば2で割った余り、3で割った余り、5で割ったあまりに注目すれば、2、3、5の最小公倍数30から三十減算などが作れます。ここでは解説しませんが調べてみるとすごく楽しいと思います。
ふ~ぅ。みなさんにどれくらい伝えられたかはわからないですけど、がんばって古来からの先人の知恵、百五減算を解説してみました。算数の解説は足りなくても書き過ぎてもよくない。毎度のことながらそれを痛感します。みなさんの感想をコメントで残してもらえたら嬉しいです。
あ、もうひとつだけどうしても書きたいことが残ってました。
今回の問題を実戦的にはどう解けばよいのか?
この見方をするなら、百五減算より講座5で書いた解き方の方がよいと思います。「3で割ると1余る」「5で割ると3余る」このふたつは差がそろっているサリーですよね? サリーでいくつかの数を見つけ、その中から「7で割ると2余る」数を見つけるのが一番早いでしょう。百五減算は実戦で使うより、じっくり読んで理解しておくことが整数問題で役立つ頭のビタミンになるという感じでしょうね。サリーってなんのこと?という人はぜひ講座5をご覧ください。脱線しますが講座5はむかしから一番人気があるんですよね。こちらのサイトに引っ越したあとも講座1と講座5の閲覧数がずば抜けてます。もう少ししたら人気順でも発表しましょうかね(*^^)
では今回の講座67はここまでにします。次回の講座68は数表シリーズ③を予定しています。そのときにまた元気でお目にかかりましょう。それじゃあまた~!
みなさんへの宿題
3で割ると1余り、5で割ると4余り、7で割ると3余る一番小さい整数を求めてください。
解答したい方はページ下のコメントに書いてください。正解不正解をレスさせていただきます。お名前はニックネームでもかまいません。