NEWみんなの算数講座83 げてばり(GeTeBaRi)

NEWみんなの算数講座83 げてばり(GeTeBaRi)

 実体験の少なさからでしょうか、小学生たちは売買損益の問題が苦手です。モノを仕入れて値段をつけて、無事にその値段で売れたり、売れなくて値引きしたり。お店のもうけは〈売った値段〉-〈仕入れた値段〉ですね。この式が引けないときはお店が損をするときです。今回はそんなお話です。

ボクは「スウサン鮮魚店」の店主です。ボクは今朝、こんな魚を魚河岸(うおがし)から仕入れてきました。このときボクが魚河岸から買った値段が原価(げんか)です。仕入れ値ともいいますね。算数の問題ではどちらも使われますが、今回の講座では原価で統一します。(わけあり)

さてボクはこの魚をお店に持ち帰って売るわけですが、まさか原価で売るわけにはいきません。ボクは商売で魚屋をやってますからね。お金がかせげなかったら、わざわざニワトリより早起きして魚河岸まで行きません。魚河岸には軽トラックで行きますからガソリン代がかかります。たくさん仕入れるときはアルバイトも雇いますよ?
そうした経費を計算して、ボクは利益(もうけ)が出るように、お客さんに売るための定価(ていか)を決めるのです。いくらに決めるかはボクの自由ですが、あまり高くすると「あそこの魚屋は高い」といううわさが立ってお客さんが来てくれなくなります。そう言われないように考えて定価を決めますね。

計画どおり定価で売れてくれれば問題ないのですが、いつもそううまくはいきません。とくに魚は新鮮さが大事だから、朝仕入れた魚でも時間がたてば売れゆきが悪くなってしまいます。ほら、さっきより少し色が悪いでしょう?(笑)
魚が売れ残ってしまうと、ボクは朝払った原価を全部損してしまいます。だから定価で売れそうもないときは、定価から割り引きをしても売った方がいいです。そのとき、定価から割り引きして売る値段のことを算数では売り値(うりね)といいます。売価(ばいか)という言い方もありますから、この講座では売価の方で話を進めます。(またわけあり)
*定価で売れれば定価=売価ですが、算数の問題では定価のことを売価とはいいません。定価は初めに決めた値段のことで、定価を割り引きして売る値段が売価(売り値)です。このことは算数ではアタリマエになっているので区別してください。

ここまでに3種類の値段が出てきましたね。原価 定価 売価 です。
では簡単な金額の例を出してみます。

原価 ➡ 朝ボクが仕入れたとき、魚河岸に払ったのは2000円でした

定価 ➡ ボクは原価に2割5分の利益を見込んでお客さんに売るための定価をつけました
2000×(1+0.25)=2000×1.25=2500円…定価

売価 ➡ 残念ながら夕方になっても売れません。ボクは仕方なく定価の1割引で売ることにしました。
2500×(1-0.1)=2500×0.9=2250円…売価

利益 ➡ 常連のおばさんが売価で買ってくれました。ボクの利益は売価-原価で、2250-2000=250円。魚屋ってあんまりもうからないなあ(笑)
*算数の問題での利益とは、この最終利益のことを指します。原価に対して見込んだ利益(500円)は実現しなかったのです。「利益を求めなさい」という問題で答えるのは、初めに見込んだ利益ではなく実際の最終利益です。

ここまでの内容で、次の3つの式はいつでも使えるようにしてください。

売買損益の問題でよく使う式
定価=原価×(1+見込む利益の割合)
売価=定価×(1-割り引きする割合)
利益=売価-原価 *定価で売れた場合は 利益=定価-原価

さてここからがこの講座のクライマックスです。さっきの例みたいな素直でやさしい問題は少なく、実際には利益と途中の割合しかわかっていないような問題が多いでしょう。そんなときのために、という解法を伝授しておきます。もちろんげてばりは原価 定価 売価 利益の頭文字ですよ。

ファンキーぬいぐるみ店では、問屋さんから仕入れたコアラのぬいぐるみに原価の3割の利益を見込んで定価をつけました。なかなか売れなかったのですが、定価の15%引きの特別セールの日に売れて、お店の利益は420円でした。
(1)コアラのぬいぐるみの原価はいくらですか?
(2)コアラのぬいぐるみの定価はいくらですか?
(3)コアラのぬいぐるみの売価はいくらですか?

こういう問題を見かけたら、問題用紙の白いところに

         

と、字と字の間隔をあけて書いてください。

そしてまず  の下にと書いてください。そうそう原価をにするのです。
*この1は割合を表す数です。具体的な量と区別するなら、①のようにマルで囲むのも一案です。解いている人が割合の数であることがわかるなら、特に書き方にきまりはないです。シカクで囲む、サンカクで囲む、どれもОKです。ここでは太字を使いました。

次に  の下に1.3と書いてください。原価をにすると3割の利益を見込んだ定価は1.3です。

次が間違える生徒が多い遭難ポイントです。
定価の15%引きの売価は1.3-0.15=1.15ではありません。さっきはもとになる原価が1だった関係で1+0.3=1.3というたし算で大丈夫だったのですが、今度はもとになる定価が1ではないから単純に引き算してはいけません。
正しい売価は1.3×(1-0.15)です。これを計算すると1.105
ば の下には1.105と書いてください。

そして最後。 の下には  を計算して書きます。
1.105-1=0.105ですね。そしてこの0.105が問題の条件で420円とわかってますから、0.105=420円という式を作ることができます。

ここまでくればあとは大丈夫ですかね。を求める簡単な計算です。(相当算)
=420円÷0.1054000円
これでにあたる原価を求めることができました。

原価がわかれば定価はカンタンですね。上に書いた公式を使って、
4000×(1+0.3)=5200円です。

売価も楽ですよ。定価5200円の15%引きだから、
5200×(1-0.15)=4420円です。
4000円で仕入れて利益が420円だから、売価は4000+420と計算してもよいでしょうね。

***
今回の解説は以上です。算数が得意な人はもっとマジメな解説でも理解してくれるでしょうけど、算数苦手だな~という人に、ユニークな解説を聞かせてあげたくて、「げてばり」の解説を書いてみました。マジメな解説は時間がたつと忘れやすいですが、この解説ならなかなか忘れないでしょう? 「げてばり」ず~っと忘れないでくださいね。

それではまた! 次の講座を楽しみに待っていてください。
あ、魚屋はもうからないから算数の先生に戻ります(笑)

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