NEWみんなの算数講座89 倍数算(前編)

NEWみんなの算数講座89 倍数算(前編)

みなさんこんにちは。ニューみん算講座89回目です。

今回と次回で倍数算と呼ばれる出題率の高い文章題を特集しようと思います。
倍数算には大きく分けて4つのパターンがあり、どのパターンもなかなか個性的です。1回で書くとかなり長くなりそうだから、2回に分けて書くことにします。
では今回は倍数算の中から、「かたっぽ固定パターン」と、「さすらいパターン」を解説します。まずは「かたっぽ固定パターン」の例題から。

藤井君と佐々木君は5:3の割合でお金を持っていました。藤井君が師匠へのおみやげを買うのに6000円使ったところ、藤井君と佐々木君の所持金の比は5:4になりました。はじめの藤井君と佐々木君の所持金をそれぞれ求めてください。

余談からになりますが、僕はこの問題を倍数算と呼ぶことに疑問があります。倍数と言えば、「3の倍数は3、6、9、12、……」ということでしょう?そのことと問題の内容があまり関係ない、倍数算という名前が問題の特長をとらえていない気がするんですよね。しかし実際かなり広範囲で(塾のテキストでも市販の本でも)倍数算と呼ばれてますから、そこは受け入れるしかないですけどね。これは余談でした。

倍数算を線分図で教える解説も多いようですが、僕は線分図を使わない方法で長年教えてきています。線分図は算数のすぐれたツールですが、倍数算に関しては線分図には休んでいてもらい、メモ書き解法に花を持たせることにします。

メモ書き解法はこんな感じです↓

[メモ]  藤井君 佐々木君
はじめ  5   3
あと   5   4

線も引かないから表とは言えないし、図でもないでしょうね。ボクの授業では倍数算メモと呼んでますが、これを書いて、あとはほんの少しの変更で問題が解けてしまいます。

問題をもう一度確認してください。佐々木君はお金を使ってないでしょう?
上のメモでは藤井君が「はじめ」も「あと」も5になってますが、間違えないでください。藤井君の「はじめ」の5と「あと」の5は無関係の5で、実際藤井君はお金を使っています。お金を使っていないのは佐々木君の方です。

そこでお金に変化のない佐々木君の「はじめ」と「あと」の数をそろえることがポイントになります。
そろえ方わかりますか?
そろえる数は最小公倍数がよいでしょう。佐々木君の「はじめ」と「あと」の数を3と4の最小公倍数12にそろえます。片方を最小公倍数に固定するから、僕はこのパターンを「かたっぽ固定パターン」と呼んでいます。

佐々木君を12に固定して、メモ書きは次のように変わります。

[メモ]  藤井君 佐々木君
はじめ  20   12   ➡佐々木君が4倍だから藤井君も4倍した
あと   15   12   ➡佐々木君が3倍だから藤井君も3倍した

ここまでくれば解答はもうすぐです。
藤井君の数が20から15に5減ってますね?それが師匠へのおみやげ代の6000円です。
5=6000円だから1=6000÷5=1200円

はじめの二人の所持金は、藤井君が20、佐々木君が12だから、
求める解答は
藤井君 1200×20=24000円
佐々木君 1200×12=14400円 です。

かたっぽ固定パターン、難しくないですよね?
では次に「さすらいパターン」の問題を出します。

里見さんと西山さんは7:4の割合でお金を持っていました。二人がホテル代の32000円を半分ずつ平等に払ったところ、里見さんと西山さんの所持金の比は9:4になりました。はじめの里見さんと西山さんの所持金をそれぞれ求めてください。

なぜこれが「さすらいパターン」なのかはあとで書きますね。とりあえず倍数算メモを用意します。

[メモ] 里見さん 西山さん
はじめ   7    4
あと    9    4

西山さんの数が「はじめ」も「あと」も同じ4ですが、そのことが手がかりにはなりません。両方4なのは問題を作ったときのたまたまです。

ではポイントはどこか?
この問題では里見さんと西山さんが等しい金額のお金(32000÷2=16000円)を使ってますね?
このように、二人が等しい金額のお金をもらったり払ったりしたとき、二人の所持金の差は変化しません。
ここが「さすらいパターン」の重要ポイントです。

そこで、上の倍数算メモに「差」という項目を追加して、比の数の「差」を書き入れます。

[メモ] 里見さん 西山さん  「差」
はじめ   7    4    3
あと    9    4    5

そして「はじめ」と「あと」で変化していない「差」の数を3と5の最小公倍数15にそろえます。そのとき里見さんと西山さんの数を「差」と同じ倍率で変化させるのは「かたっぽ固定パターン」のときと同じです。

[メモ] 里見さん 西山さん     「差」
はじめ   35    20    15 ➡「差」が5倍だからすべて5倍
あと    27    12    15 ➡「差」が3倍だからすべて3倍

とてもきれいに仕上がりました。里見さんも西山さんも8減ってますね?
*35-27も20-12も8

この8がホテル代の半分の16000円です。
8=16000円だから1=16000÷8=2000円
はじめの二人の所持金は、里見さんが35、西山さんが20だから、
求める解答は、
里見さん 2000×35=70000円
西山さん 2000×20=40000円 です。

「さすらいパターン」も難しくないですよね。僕がこのパターンを「さすらいパターン」と呼ぶ理由は、最初は差をそろえるから「差そろえパターン」と呼んでいたのが、いつからか 差そろえ→さすらい と変わりました。なんとなく音感が似てるでしょう?それだけです(笑) まぁでも「差そろえ」は言葉にインパクトがないから「さすらい」の方が印象に残ると思います。ちなみに「さすらい」は漢字だと「流離」「漂泊」などと書き、あてもなくさまよい歩くという意味です。

余談も多かったですが、倍数算を2パターン解説しました。今回はここで一度終わりにします。次回はもう少し進化したパターンの倍数算を解説します。次が90回ですね。どうぞお楽しみに!

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