NEWみんなの算数講座97 ベン図で考える倍数の個数
みなさんこんにちは。NEWみんなの算数講座97回目です。あと3講座進むと100講座。記念すべき大台がかなり視界に入ってきました。
今回のテーマは、分数を並べた数列の中で、約分できない既約分数の個数を求めるという問題です。解説の後半では、ベン図を使って倍数や公倍数の個数を計算します。方針が決まればその計算は簡単ですが、問題を見たときは「これって何を計算すればいいの?」と迷う問題だと思います。よく読んで算数らしい考え方をしっかりマスターしてくださいね。では問題を出します。
分子と分母をたすと1000になる真分数(分母が分子より大きい分数)は、次の499個です。このうち、約分できない分数(既約分数)は全部で何個ありますか?
499/501、498/502、497/503、………、3/997、2/998、1/999
*webではふつうに分数を表示するのが大変なので、 分子/分母の形で分数を表記します。「後ろ」ぶんの「前」です。
念のため、既約分数を説明しておきますね。
既約分数とは、分子と分母を同じ整数(1は除く)で割ることができない分数のことです。既約分数の分子と分母は、1以外に公約数を持たない「互いに素」の関係です。
〈例〉
3/5 ➡ 約分できない(3と5は互いに素) ➡ 3/5は既約分数
3/6 ➡ 約分できる ➡ 3/6は既約分数ではない
まさか499個もある分数を1つ1つ調べることはできませんから、何かの法則を見つける必要があります。
求める分数の分母を□、分子を1000-□とします。
(1000-□) / □ ← 求める分数
この分数が約分できない既約分数であるためには、
分母の□と分子の(1000-□)が互いに素……☆ であればよいです。
では、□がどのような数のとき、☆が成り立つでしょう?
じつは、□と1000が「互いに素」のとき、☆が成り立つのです。
理由を考えてみましょう。
□と1000に公約数(1以外)があると、その公約数は1000-□の約数にもなっています。つまり、□と1000に公約数があると、□と1000-□にも公約数があることになり、(1000-□) / □ が約分できるから、☆が成り立たなくなります。
説明に文字が入っていると、わかりにくいかもしれませんね。具体的な数で説明すると、650と1000には公約数があります。たとえば50が公約数です。この50は1000と650の差の350の約数にもなっています。650と1000に公約数があると、350/650は約分できる分数になり、☆は成り立ちません。
もう一度まとめます。
(1000-□) / □ が既約分数になるのは、□と1000が「互いに素」のときです。
*□と1000に1以外の公約数があると (1000-□) / □ は約分できる分数です。
さて、このことをどう解答につなげるか?もう少しがんばって読んでください。
分母の□は501以上999以下の整数です。この範囲で、□と1000が互いに素になるような□の個数を調べれば、それが問題の解答です。
1000を素因数分解すると、1000=2×2×2×5×5×5だから、
□が2の倍数か5の倍数のとき、□と1000は互いに素になりません。つまり、□が2の倍数でも5の倍数でもなければ、□と1000は互いに素です。
ここから計算です。
2の倍数でも5の倍数でもない整数の個数を、次のようなベン図を書いて考えてみます。
501から999までの整数の個数は、999-501+1=499個です。
*+1を忘れずに!
2の倍数の個数は …ベン図の左の輪
999÷2=499あまり1
500÷2=250
499-250=249個
この計算方法についてはあとで書きます。
5の倍数の個数は …ベン図の右の輪
999÷5=199あまり4
500÷5=100
199-100=99個
2と5の公倍数(=10の倍数)の個数は …2つの輪の重なり
999÷10=99あまり9
500÷10=50
99-50=49個
2の倍数、5の倍数の少なくともどちらかに含まれる個数は …2つの輪の重複を引いた合計
2の倍数の個数と5の倍数の個数をたして、2回数えている2と5の公倍数(ベン図の中央)を引きます。
249+99-49=(249-49)+99=200+99=299個
この個数を全体の個数から引いて、求める個数(501以上999以下の範囲で、2の倍数でも5の倍数でもない整数の個数)は、499-299=200個 …ベン図の輪の外側
と求めることができます。これが問題の解答です。
上で何回か使った倍数の個数の求め方。よく使うので整理しておきます。
整数〇から整数△までに含まれるPの倍数の個数の求め方
△÷Pの商の整数部分 から (〇-1)÷Pの商の整数部分 を引く
*割り算であまりが出た場合は無視してよいです。
*1から△のように、範囲の始まりが1のときは、△÷Pの商の整数部分を求めるだけでよいです。
いかがでしたか?
解説は、上の囲みポイントを説明したかった関係で、分母に注目して501から999の範囲で「2の倍数でも5の倍数でもない整数」を計算しましたが、分子に注目して、1から499の範囲で「2の倍数でも5の倍数でもない整数」を調べても答えは同じになります。範囲が「1から」になるので、こちらの方が簡単ですね。時間がある方は、ぜひ調べてみてください。
では今回はここまでにします。100講座到達も近づいてますので、なるべく早いうちに次回の講座を発表したいと思ってます。それではまた!
カーテンコール
本題には直接関係ないですが、元祖版でこの講座を書いたとき、覆面算を出題していました。今回の改訂でも消さずに残しますね。同じアルファベットに0~9の同じ数字があてはまります。違うアルファベットが同じ数字にはなりません。ぜひ考えてみてください。(解答は次回の講座で)
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