NEWみんなの算数講座76 死も苦しみもない世界

NEWみんなの算数講座76 死も苦しみもない世界

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皆さんこんにちは。ニューみん算講座76回目です。

今回の講座では、N進法を使ったとても面白い問題を紹介します。N進法の基礎については第50~51講座に書きましたから、N進法の基礎に自信がない人は、先にそちらからお読みください。N進法の基礎がわかってないと、今回ついてくるのは大変だと思います。

では話を始めます。

人間に生まれた以上、死や苦しみはつきものです。アウストラロピテクスの時代から現在に至るまで何百万年、死をまぬがれ、永遠の命を授かった人間はひとりとしていません。残念ながら人間には寿命というものがありますからね。
*アウストラロピテクス…アフリカで生まれた初期の人類。200-400万年前。くわしくはこちらからどうぞ!

いきなりこんな話をしたら「あれ?今回は算数の講座じゃないの?」
と思われてしまいそうですが、ご心配なく!ちゃんと算数なんです。算数の世界には死も苦しみもない世界があるんですよ。ホントかって? はいホントです。
では死も苦しみもない世界を下に書いてみますよ?

1、2、3、5、6、7、8、10、11、12、13、15、16、17、18、20、
21、22、23、25、26、……、37、38、50、51、52、53、55、56、……、
87、88、100、101、102、103、105、106、107、108、
110、111、112、113、115、116、……

はい、これが死も苦しみもない世界です。
わかりますか?
数を1から順に並べましたが、死(4)と苦(9)を用いる数がすべて抜いてあります。僕は別にふざけてませんからね。これ、大まじめな算数の題材なんです。

ではこれから死も苦しみもない問題を出しますが、今書いたような数の並べ方を病院方式と呼ぶことにしましょう。病院は縁起上の配慮から、一の位が4や9の部屋、104号室や209号室を作りませんからね。
(注)ここでの病院方式は、すべての位に4と9を使いません。 つまり4と9は数字として存在しないのです。病院では「一の位」に4と9を使わないだけだから、病院の部屋番号とここでの病院方式は同じではありませんが、イメージとして病院方式と呼ぶことにします。

では問題いきます。

国会で、日本の数の数え方を4と9を使わない病院方式に変更することが可決されました。変更後、ある人がタクシーに乗ったとき、料金を15000円と言われました。この料金は変更前なら何円だったでしょうか?

変更前の料金が15000円より安いことはわかりますね?
なぜなら、変更後の病院方式は4と9という数字を使わないから、そのぶん数の進み方がはやくなり、15000という数は変更する前よりはやく現れるはずだからです。

この問題、じつは8進法の問題なんです。8進法は8個の数字で数を表していく方法のことです。

そしてここが少しややこしいのですが、ふつう8進法では0~7の8個の数字を使います。しかし病院方式の8進法は4と9を除いた〈01235678〉という8個の数字を使うのです。普通の8進法と病院方式の8進法で使う数字を対応させると次のようになります。

9がないことはどちらも同じですが、病院方式の8進法には4がないから、上のように普通の8進法の4~7が、病院方式の8進法では5~8となり、1つずつズレが生じています。

それでは解答を求めましょうか。
病院方式の8進法で表された15000は、いま説明した使う数字の違いから、普通の8進法なら14000です。
*病院方式の8進法の5は、普通の8進法の4(上表参照)

したがって、8進法の14000を10進法に直せば解答が求められます。国会での変更前は僕たちがいつも使っている10進法ですからね。

4×1+83×4=4096×1+512×4=4096+2048=6144より、
病院方式(国会での変更後)で日本人が払ったタクシー代の15000円は、変更前の僕たちがいつも使っている10進法では6144円だったことがわかります。
*84は8×8×8×8の意味です。(第50~51講座参照)

死も苦しみもない算数の世界、いかがでしたでしょうか?
たった数字が2個減っただけで、6000円ちょっとが15000円になるなんて、なんか意外な感じがしますね。僕も問題を考えたとき、もう少し15000円に近い答えかと予想しました。でもしっかり計算しましたよ。6144円で合っています。

簡単? そう思った人はN進法がよくわかっているから安心して大丈夫ですよ。
難しい? もう一度N進法の基礎をよく振り返ってみてくださいね。

それでは今回の講座はこれで終わりにしようと思います。次の講座、なるべく早く発表できるようにしますね。ではではまた。

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